『根岸表具店』さんの奥が深い表具師のお仕事~ふすまの張替えなど~ 【№204】
みなさんこんにちは
新年明けましておめでとうございます
本年もどうぞよろしくお願いいたします
新年第1号★は有田市箕島にある『根岸表具店』さんのご紹介です
まず表具店ってどんなお仕事をするところなのか皆さんご存じでしょうか?
表具店とは『紙を使う仕事』
よく建具屋さんと混同される方が多いそうですが建具屋さんは『木を使う仕事』
ふすまや障子、掛け軸など、紙を利用した建具を和紙や布、のりを使って仕立てたり、修復をしたりするのが表具店の主な仕事です
ご主人の根岸さんは
創業100年以上続く
老舗の表具店の3代目
「仕事は見て覚える」というものだったので
先代の仕事を見て、そして自分の体で覚えて
表具師として38年、技術を受け継いで来られたそうです
あまり見せられる仕事ではないのだけど、、
とのことだったのですが
ふすまの張替えであればと今回特別に見学させていただきました!
ご主人ありがとうございます
見学させて頂いたのは
「ふすまの張替えの上張りの作業」
ふすまの大きさにカットしておいた襖紙に
刷毛を使ってのりをムラなく塗りながら紙を伸ばしていきます
のりはでんぷんのりを使用しています
でんぷんのりは修理の際に剥がれやすいという利点があるそうです
ホームセンター等で張っているものだと
化学のりを使用しているところが多く
張り替えの際に張り替えたい部分だけではなく
張り替えの必要のない他のところまで一緒に剥がれてしまい
結果、全部張り替えてしまわないといけないことも、、
化学のりを使用しているものです
このようにきれいにはがすことができません
また今ではアイロンや両面テープを使って
自分で簡単に障子張りできるものがありますが
手軽さの反面、次の張替えの際に組子を痛めてしまう可能性があって
結果的に障子そのものの寿命を縮めてしまう恐れがあるそうです
安さの裏には何かあるということを知ってほしいとおっしゃられていました。
のりを塗った上に うけ紙を重ねていきます
上張りする前の状態のふすまです
先ほどの紙をこの上に張っていきます
無駄のない動きに見入ってしまっている間に
あっという間に一枚張り終わってしまいました
ただ単にベタ張りしたように見えるのではなく
ふわーっと見せられるかが良い仕上がりのポイントだそうです
微妙な力加減など、技術がないと
なかなか上手くいかないものなのだとか。
この後、張ったものが乾いてから
縁(ふち)と引き手をつけたら完成です
張っては乾かし、張っては乾かしの作業になるので
今回は上張りからでしたが下張りからの張り替えだと
最低3日程度かかるそうです
即日張替えといった広告を見ることがありますが
実のところは
ワクをつけたまま張り替えをしていたりと
本職のふすまの張り替え方とは異なるのだとか。
なるほどです
あと知らなかったのは
紙を扱う表具屋の仕事は天候に左右される仕事だということ
紙は湿度が高いと伸び、乾燥していると縮む性質を持っているため
天候によっては支障がでるので作業が出来ないこともあるそうです
天気予報と湿度計のチェックは
毎日欠かせられないルーティン
また表具師の仕事は力のいる作業が多く
「握力が強くなる、職業病のようなもの」という
お話もしてくれました
「 職人さんの手」という感じがしました~
ちなみに握力86キロあるそうです
ふすまは今は無地のデザインを選ばれる方が8割以上と多く
1番のメリットは「飽きが来にくいこと」だとおっしゃられていました
馴染みが良いのでどんな雰囲気のお部屋にも合うのも良いところ
逆にデザイン性が高いものはお部屋の雰囲気をガラリと変えることができるので
模様替えがしたいときなどにおすすめです
紙の種類はたくさんあって
このような見本が何冊もあります!
お好みの紙もきっと見つかるはず
ふすまには湿度を調整する機能があり湿気を吸ってくれています
またふすまの色が変わってくるのは空気が循環している証拠
紙が劣化してくると機能が劣ってくるので
張り替えることで調湿、浄化の機能が戻り
お部屋が明るくなるだけではなくお部屋の環境も良くなります
張り替えのタイミングは
部屋の大きさや環境によって変わるので
一概に何年とは言えないそうですが
長期間張り替えをしていない場合や、
やけてきたり、破れてきたりしていたら
張替えを検討してみたほうがいいそうです
根岸さんは
「再生できるように作る」
ということを大切にされています
仕立てる際には仕上がりの良さだけではなく
修理する時のことまで考えて仕立てられます
古くなって劣化してしまったものも
根岸さんの手によって修復することができます
いいものを作りたい、
モノを大事にしたいという思いが
お話をしていて伝わってきました
根岸さんへの仕事の依頼は県外からもあり、
中には広島県因島から依頼がきたこともあるそうです
そのほとんどが口コミによるものだそうで
根岸さんの腕が信頼されていることが伺えます
以前は有田市に4軒ほど表具屋があったそうですが
現在はここ根岸表具店さん1軒のみ
和式から洋式へと、家屋の様式の変化もありますが
後継者不足が主な原因だと根岸さんはおっしゃられていました。
後継者不足は表具に限らず、
日本が抱える問題の一つですが
「伝統を継承していく仕事」である表具屋
次の時代にもぜひ受け継がれていってほしいものです
今回はふすまについて主にお話を聞かせていただきましたが
根岸表具店さんでは
・ふすま張替
・障子張替
・古書画修復
・額装
・掛軸表装
・四国・西国表装
・表具一式
など、紙にまつわる幅広いお仕事をされています
今回、掛軸表装の仕立て直しの写真を提供していただけたので
ご紹介させていただきます~
●六号名号掛軸し直し前
●裏打ち捲り途中
(裏面より紙をあて補強することを裏打ちといいます)
過去に裏打ちされていたものをはがし、裏打ちを再度おこないます
●表装し直し途中(継ぎ合わせ)
表装が変わると雰囲気もガラリと変わりますね
ふすま、障子の張替はもちろん、
破れてしまった、シミができてしまった掛け軸を修復したい
自分の作品や書画を表装したい など
仕上がりのイメージや予算など相談に乗ってくれますので
まずはお気軽にお電話ください
根岸表具店
有田市箕島1387
営業時間:8:00~18:00
定休日:不定休
電話番号:0737-82-4002